外国人従業員を雇用している企業にとって、避けて通れない定期イベントが「在留期間更新許可申請(ビザ更新)」です。 「本人が自分でやるだろう」と任せきりにしていませんか? もし更新手続きを忘れて期限を1日でも過ぎれば、その従業員は「不法残留(オーバーステイ)」となり、企業も不法就労助長のリスクを負うことになります。
本記事では、在留期間更新の基礎知識、企業が管理すべきリスク、そして自社対応か行政書士へ依頼するかの判断基準について解説します。
1. 在留期間更新許可申請とは
手続きの概要
「在留期間更新許可申請」とは、現在日本に在留している外国人が、現在持っている在留資格のまま、在留期間(滞在期限)を延長して活動を継続するために行う手続きです。 一般的に「ビザの更新」と呼ばれますが、正式には法務大臣に対して許可を求める行政手続きです。
「認定(COE)」や「変更」との違い
よく混同される手続きとの違いを整理しましょう。
• 在留期間更新許可申請:現在の活動内容や資格を変えず、期間だけを延長する手続き。
• 在留資格変更許可申請:留学生を新卒採用する場合や、職種が変わる場合など、別の資格へ種類を変える手続き。
• 在留資格認定証明書交付申請(COE):海外にいる外国人を新たに呼び寄せるための手続き。
つまり、すでに自社で働いている外国人社員が、同じ業務内容で働き続ける場合に行うのが「更新申請」です。
いつから申請できるか
原則として、在留期間満了日(期限)の3ヶ月前から申請することが可能です。 期限ギリギリになって慌てないよう、企業側でも期限管理を行い、早めの準備を促すことが重要です。
2. 企業が管理すべき「期限切れ」のリスク
1日でも過ぎれば「不法残留」
最も注意すべきは、在留期間の満了日です。この日までに更新申請(または変更申請)を行わなければ、原則として法的な在留資格がなくなり「不法残留」となります。
不法残留の状態になれば、退去強制処分の対象となる可能性があり、企業としても貴重な人材を失うことになります。
「特例期間」という猶予措置
もし審査に時間がかかり、結果が出ないまま在留期限が来てしまったらどうなるのでしょうか。
在留期間満了日までに更新申請を行い、それが受理されていれば、「特例期間」が適用されます。
これは、処分(結果)が出る日、または従前の在留期間満了日から2ヶ月を経過する日のいずれか早い時まで、適法に日本に滞在・活動できる制度です。
ただし、これは「期限内に申請済みであること」が絶対条件です。
期限を過ぎてから申請しようとしても、特例期間は適用されません。
「本人任せ」は危険
「ビザのことは本人が一番分かっているはず」と管理を本人任せにするのは危険です。
本人が「まだ大丈夫」と勘違いしていたり、多忙で忘れていたりするケースは珍しくありません。
企業は在留カードの有効期限を把握し、更新時期が近づいたらアナウンスする体制を整えるべきです。
3. 審査のポイントと期間
標準的な審査期間
更新申請の審査期間は、申請内容や入管の混雑状況によりますが、おおむね2週間~1ヶ月程度が目安とされています(※あくまで目安であり、前後します)。
ただし、書類に不備があったり、納税状況に問題があったりすると、追加資料の提出を求められ、審査が長期化することがあります。
審査で何が見られるか
更新申請は「書類を出せば自動的に許可される」ものではありません。主に以下の点が審査されます。
1. 活動の実態:許可された在留資格通りの活動をきちんと行っているか。
2. 素行の善良性:法律違反がないか、税金や社会保険料を適正に納めているか。
3. 独立生計要件:日本で安定して生活できる収入があるか。
特に、転職後の初めての更新や、扶養家族が増えた場合などは審査が慎重になる傾向があります。
4. 自社申請か、行政書士へ依頼か
2026年現在、オンライン申請も普及し、企業や本人が手続きを行うハードルは下がっています。しかし、リスク管理や業務効率化の観点から行政書士へ依頼する企業も多くあります。 どちらを選ぶべきか、判断の基準を解説します。
自社・本人申請のメリット・デメリット
• メリット:
◦ 行政書士報酬がかからず、コスト(印紙代のみ)で済みます。
◦ 社内でノウハウが蓄積されます。
• デメリット:
◦ 不許可リスク:書類の不備や説明不足により、不許可になるリスクがあります。特に、前回申請時から事情が変わっている場合などは注意が必要です。
◦ 業務負担:書類作成や、窓口申請の場合の待ち時間など、担当者や本人の業務時間を圧迫します。
◦ 判断の難しさ:個別の事情に合わせて、どの書類が必要かを判断するのは専門知識が必要です。
行政書士に依頼するメリット・デメリット
• メリット:
◦ 申請取次:申請取次行政書士に依頼すれば、原則として本人が入管に行く必要がなく、業務に専念できます。
◦ 適切な書類作成:企業の状況や本人の経歴を踏まえ、許可の可能性を高めるための書類作成や理由書による補足説明を行います。
◦ リスク回避:不許可事例などの知識に基づき、リスクを予見して対策を講じることができます。
• デメリット:
◦ 行政書士への報酬費用が発生します。
◦ 最終決定権は入管にあるため、100%の許可保証はできません。
どちらを選ぶべきか
以下のようなケースでは、行政書士への依頼を検討することをお勧めします。
• 「定型的な更新」ではない場合:転職を挟んで初めての更新の場合や、職務内容が変わった場合。
• 過去にトラブルがある場合:税金の未納があった、過去に不許可になったことがある等。
• 社内リソースが不足している場合:管理部門が忙しく、手続きの不備リスクを避けたい場合。
• 大量の更新がある場合:多数の外国人従業員の期限管理を一括して任せたい場合。
5. 実務上の注意点:オンライン申請の落とし穴
「オンライン申請だから簡単」と思われがちですが、審査基準や提出すべき資料の要件は、窓口申請と全く同じです。
入力ミスや添付書類の不足があっても、システムが自動で修正してくれるわけではありません。不備があれば補正指示(追加資料提出)の対応に追われたり、最悪の場合は不許可になったりするリスクもあります。
オンラインで行う場合こそ、制度の正確な理解が必要です。
まとめ
在留期間更新許可申請は、外国人従業員が日本で働き続けるための「命綱」をつなぐ手続きです。 ルーティンワークのように思えますが、期限管理の失敗や書類の不備は、雇用継続に関わる重大なトラブルに発展しかねません。
「前回と同じだから大丈夫」と油断せず、期限の3ヶ月前から余裕を持って準備を進めることが重要です。もし手続きに不安がある場合や、業務効率化を図りたい場合は、専門家である行政書士への相談をご検討ください。