外国人従業員が長く日本で働き続ける中で、最終的な目標として「永住者」の在留資格取得を希望するケースが増えています。 「永住許可」を取得することは、従業員本人にとってメリットが大きいだけでなく、企業にとっても「在留期限の更新コスト削減」や「長期的な雇用の安定」につながる重要なステップです。
しかし、永住許可申請はすべての在留資格申請の中で最も審査が厳格であり、単に長く住んでいれば許可されるものではありません。 本記事では、永住許可の基礎知識、審査のポイント、企業が求められる協力範囲、そして専門家(行政書士)活用の判断基準について解説します。
1. 永住許可申請とは
概要とメリット
「永住許可」とは、在留資格を有する外国人が、法務大臣に対して永住者の在留資格への変更を申請し、許可を受ける手続きです。 許可されると、以下のメリットが発生します。
1. 在留期間の制限がなくなる:毎年のように発生していた「更新手続き」が不要になります(※在留カード自体の有効期間更新は必要です)。
2. 活動内容の制限がなくなる:就労ビザでは認められない単純労働や、独立開業などを含め、日本人と同様に自由な職業選択が可能になります。
3. 社会的信用の向上:住宅ローンの審査や商取引において有利になる場合があります。
企業にとっては、更新忘れによる不法就労リスクがなくなり、安定した長期雇用が見込める点が大きなメリットです。
審査期間の長さ
通常の更新申請が数週間から1ヶ月程度で終わるのに対し、永住許可申請の審査期間は非常に長く、数ヶ月から1年以上かかるケースも珍しくありません。申請から結果が出るまでの間、現在の在留資格の期限が切れる場合は、別途更新手続きが必要になる点に注意が必要です。
2. 許可の3大要件と「国益適合性」
永住許可の要件は入管法第22条に規定されており、主に以下の3つが審査されます。
(1) 素行善良要件
法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることが求められます。懲役・禁錮・罰金刑などを受けていないことが前提です。
(2) 独立生計要件
日常生活において公共の負担にならず、有する資産や技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることです。これは世帯単位で判断され、安定した収入があることが重要視されます。
(3) 国益適合性(最も重要なハードル)
「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」という抽象的な要件ですが、ガイドラインにより以下の具体的な基準が示されています。
• 居住歴:原則として引き続き10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は就労資格(技能実習や特定技能1号を除く)等で在留していること。
• 公的義務の履行:納税(所得税、住民税など)、公的年金、公的医療保険料を適正に納付していること。特に近年は、支払いの「遅延」も厳しくチェックされる傾向にあります。
• 最長の在留期間:現在持っている在留資格が「最長の在留期間(当面は3年)」であること。
3. 企業が関与する範囲と注意点
永住許可申請は、あくまで外国人本人による申請(個人の手続き)であり、企業が申請人(スポンサー)になるわけではありません。
しかし、審査では安定した就労状況の証明が求められるため、企業は以下の協力を依頼されることが一般的です。
企業が求められる書類
• 在職証明書:現在の職務内容や在職期間を証明するもの。
• 収入証明関連:源泉徴収票の再発行や、場合によっては給与支払証明書など。
• 身元保証:以前は会社の上司や代表者が身元保証人になるケースがありましたが、現在は日本人や永住者の友人に依頼することも可能です。
企業の対応スタンス
企業はあくまで「協力者」の立場です。以下の点に留意して対応する必要があります。
1. 事実に基づく正確な書類提供:虚偽の内容(実際より高い給与額など)を記載すると、申請の信頼性を損なうだけでなく、企業のコンプライアンス違反となります。
2. 結果の非保証:永住許可は法務大臣の裁量による行政処分であり、企業が推薦したからといって許可されるものではありません。
3. 公平性:特定の従業員のみを特別扱いせず、社内で協力範囲のルールを明確にしておくことが望ましいです。
4. 近年の傾向:審査と管理の厳格化
永住許可を取り巻く環境は年々厳しくなっています。 2026年1月の閣議決定等に関連する動きとして、税金や社会保険料の未納防止を徹底し、公的義務を果たさない場合の永住資格の見直し(取消し等)も含めた厳格化の方針が示されています。 「一度取れば安泰」ではなく、取得時も取得後も、適正な納税・社会保険加入が厳しく求められる時代になっています。企業としても、社会保険の未加入や手続き漏れがないよう、労務管理を徹底する必要があります。
5. 自力申請か、行政書士へ依頼か
永住申請は提出書類が膨大であり、また「理由書」の作成など高度な論理構成が求められます。企業や本人が対応するか、専門家に依頼するかの判断基準を整理します。
本人申請の課題(リスク)
• 理由書作成の難易度:永住許可申請では、日本での経歴や貢献、動機を説明する「理由書」の提出が必須です。これを論理的に、かつ入管法上の要件に適合するように作成するのは、外国人本人にとって大きな負担です。
• 書類の整合性:過去の在留資格申請の内容と、今回の永住申請の内容(職歴や家族構成など)に矛盾があると、虚偽申請を疑われ不許可になるリスクがあります。
• 公的義務の証明:年金や保険料の納付記録を過去数年分にわたり漏れなく証明する必要があり、資料収集だけで多大な労力を要します。
行政書士に依頼するメリット
• 適合性の事前診断:要件(特に年金・保険の納付状況や居住歴)を満たしているか、事前にプロの目で診断できます。要件を満たしていない場合、申請時期を見送るアドバイスも可能です。
• 理由書の作成代行:個別の事情(家族、貢献度、将来設計など)をヒアリングし、説得力のある理由書を作成します。
• 不許可リスクの低減:審査期間が長いため、一度不許可になると再申請までのタイムロスが大きくなります。専門家の関与により、一発許可の可能性を高めることができます。
まとめ
永住許可申請は、外国人従業員にとって日本でのキャリアの集大成とも言える手続きです。 企業にとっては、更新手続きの手間から解放される一方で、申請時の書類協力や、日頃の適切な社会保険・税務処理が従業員の審査に直結することを理解しておく必要があります。
特に、「理由書」の作成や複雑な年金記録の整理が必要となるため、従業員の負担軽減と確実な許可取得を目指す場合は、専門家である行政書士への相談を推奨します。