特定技能の申請が不許可となる場合、その背景には共通するパターンが見られます。本記事では、出入国在留管理庁の「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(以下「運用要領」といいます。)をもとに、審査で確認される基準を整理した上で、外国人本人・受入企業・支援計画のそれぞれに関するつまずきやすい典型例と、申請前に確認しておきたいポイントを解説します。
特定技能申請の「不許可」とは何か
申請の3つの類型
特定技能に関する申請には、主に次の3つの類型があります。
- 在留資格認定証明書交付申請:海外から外国人を呼び寄せる場合
- 在留資格変更許可申請:すでに日本に在留する外国人(留学生・技能実習修了者など)が特定技能へ移行する場合
- 在留期間更新許可申請:特定技能としての在留を継続する場合
いずれの類型でも、後述する基準への適合が審査されます。なお、技能試験に合格していても、そのことをもって在留資格の付与が保証されるものではないことが、運用要領に明記されています。
不許可=再申請不可ではない
申請が不許可となった場合でも、再申請自体は可能です。不許可の理由を確認し、問題点を解消できるかどうかを検討した上で、再申請の可否を判断することになります。ただし、個別の事情により対応は異なるため、専門家への相談をおすすめします。
審査で確認される基準(根拠となる法令・公式情報)
特定技能の審査基準は、大きく次の3層で構成されています。
- 外国人本人に関する基準:技能水準・日本語能力水準(試験合格等により証明)
- 受入れ機関(特定技能所属機関)に関する基準:出入国管理及び難民認定法第2条の5に基づく特定技能雇用契約の基準・受入れ機関自体の基準(特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(以下「特定技能基準省令」といいます。)第1条・第2条)
- 支援計画に関する基準:1号特定技能外国人支援計画の作成義務(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)第2条の5)と支援内容の基準(特定技能基準省令第3条)
これらの詳細は、運用要領に示されています。なお、特定技能の対象は分野省令(平成31年法務省令第6号)に定める19の特定産業分野であり、このうち特定技能2号での受入れ対象は11分野に限られています。
典型例1:外国人本人側の要件に関するもの
技能試験・日本語試験と業務区分の不一致
特定技能1号では、従事しようとする業務に必要な技能を有していることを、分野別運用方針に定める試験等で証明する必要があります。合格した試験の分野・業務区分と、実際に従事する予定の業務が対応していない場合、技能水準の証明として認められません。
なお、技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合には、試験による証明は不要とされています。「良好に修了」とは、技能実習を2年10か月以上修了し、技能検定3級等の実技試験合格、または実習実施者による評価調書で認められることをいいます。
在留状況に問題がある場合(変更申請)
すでに日本に在留している外国人が特定技能へ変更する場合、在留状況等が総合的に勘案されます。運用要領では、原則として変更を適当と認める相当の理由がないと判断される例として、次が挙げられています。
- 「留学」の在留資格を有する者で、所属していた教育機関における在籍状況が良好でないもの
- 失踪した技能実習生
- 「短期滞在」の在留資格を有する者
留学生の採用を検討する企業は、出席状況などの在籍状況にも注意が必要です。
典型例2:受入れ機関側の要件に関するもの
報酬額(日本人と同等以上)の説明不足
特定技能基準省令第1条は、外国人に対する報酬の額が「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」を求めています。同程度の技能を有する日本人労働者がいる場合は、職務内容や責任の程度が同等であることを踏まえた説明が、いない場合は賃金規程や近い職務の日本人労働者との比較による説明が必要です。この説明(参考様式第1-4号「特定技能外国人の報酬に関する説明書」)が不十分な場合、基準への適合が認められないおそれがあります。
従事させる業務と業務区分の不一致
特定技能外国人が従事できるのは、分野別運用方針に定める業務区分に該当する業務です。実際の業務内容が業務区分と一致しない場合や、申請書類上の業務内容と実態が異なる場合は、審査上の問題となります。
欠格事由への該当
特定技能基準省令第2条は、受入れ機関の欠格事由を定めています。例えば次のような場合が該当します。
- 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行終了等から5年を経過しない場合
- 労働基準法・職業安定法等の労働関係法令違反により罰金刑に処せられ、5年を経過しない場合
- 受入れ機関の責めに帰すべき事由により、外国人(技能実習生を含む)の行方不明者を発生させた場合
行方不明者については、雇用条件どおりに賃金を支払っていないなど法令違反等があった期間内に発生した場合、1人でも基準不適合となるとされています。
典型例3:支援計画・提出書類に関するもの
支援計画の記載不備・支援体制の説明不足
特定技能1号では、受入れ機関に支援計画の作成が義務付けられており(入管法第2条の5)、支援内容は特定技能基準省令第3条の基準に適合する必要があります。支援責任者・支援担当者の選任や、外国人が十分に理解できる言語による支援体制など、計画の内容と実施体制の両面が確認されます。登録支援機関へ委託する場合も、委託契約の内容が審査対象となります。
書類間の記載矛盾・必要書類の不足
特定技能の申請は提出書類が多く、雇用条件書・報酬に関する説明書・所属機関概要書など、複数の書類にまたがって同じ事項を記載します。書類間で記載内容に矛盾がある場合や、分野別に必要な書類(協議会加入関係書類等)が不足している場合、審査の長期化や追加資料提出の求めにつながります。提出書類の一覧は出入国在留管理庁のサイトで公表されており、改定されることがあるため、申請時点の最新版の確認が重要です。
不許可を避けるための実務ポイント
- 申請前に、合格した試験と業務区分の対応関係を確認する
- 変更申請の場合、本人の在留状況(在籍状況・活動状況)を確認する
- 報酬について、日本人との比較の観点から説明できる資料を整えておく
- 労働・社会保険・租税関係の法令遵守状況を点検しておく
- 支援計画の内容と実施体制が基準に適合しているか確認する
- 提出書類間の記載の整合性を最終確認する
不許可となった場合は、その理由を確認した上で、解消可能な問題かどうかを見極めてから再申請を検討することが重要です。
まとめ
特定技能申請の審査は、外国人本人・受入れ機関・支援計画の3層の基準への適合を確認するものであり、不許可につながりやすいポイントもこの3層に整理できます。基準の詳細は運用要領等で公表されていますが、個別の事案ごとに判断が異なる部分もあります。申請をご検討の際は、最新の公式情報の確認と、必要に応じて専門家への相談をおすすめします。
