既存の監理団体は育成就労制度でどこを変える必要があるか

令和9年4月1日の育成就労制度施行に向けて、技能実習制度の監理団体には「新たに整えるべきもの」と「経過措置で続けられるもの」があります。本記事では、公表されている運用要領・経過措置資料をもとに、既存の監理団体が確認すべき変更点を体制・契約書類・受入れ実務の3つの面から整理します。

前提:監理団体の許可は自動移行しない

まず押さえておきたいのは、技能実習制度で監理団体の許可を受けていても、育成就労制度で監理支援事業を行うには新たに監理支援機関の許可を受ける必要があることです。

一方で、監理支援事業の許可を受けた場合は、技能実習法に基づく一般監理事業の許可を受けたものとみなされ、監理団体として活動することも可能とされています。経過措置期間中は在籍中の技能実習生の監理と育成就労の監理支援が並行するため、この「みなし」の仕組みが実務上重要になります。

制度の概要と許可要件の詳細は、当ブログの「監理支援機関とは?」「許可申請で詰まりやすいポイント」の記事もあわせてご参照ください。

体制面で変える必要があるもの

外部監査人の設置(任意から許可要件へ)

技能実習制度では外部監査人の設置は選択制でしたが、育成就労制度では許可要件になります。外部監査人には外部性の要件(監理支援機関の過去5年以内の役職員でないこと、傘下の実施者と密接な関係にないこと等)と、資格・能力要件(弁護士・社会保険労務士・行政書士等)があります。現在指定外部役員方式をとっている団体は、体制の組み替えが必要かどうかの確認が第一歩です。

密接関係役職員の業務分担の見直し

監理支援機関の役職員のうち、傘下の育成就労実施者と密接な関係を有する者(現・元役職員、その配偶者・二親等以内の親族等)は、当該実施者に対する監理支援のうち「個人情報管理」「入国後講習の実施」以外の業務に関与できません。実施者の関係者が役職員にいる団体は、担当割りの見直しが必要になる場合があります。また、送出機関の役員と監理支援機関の役員の兼任は認められません。

常勤役職員数の確認

監理支援の実務に従事する常勤役職員は、①2人以上、②実施者数÷8を超える、③対象外国人数÷40を超える、のすべてを満たす必要があります。総務・経理専従の職員はこの人数に含まれないとされているため、現在の人員構成で基準を満たすかの確認が必要です。

監理支援責任者の選任と講習

常勤の監理支援責任者を選任し、申請時点で過去3年以内に受講した講習の受講証明書が必要です。経過措置として、育成就労法施行前に受講した技能実習制度の監理責任者等講習の受講証明書も有効とされています。受講時期によっては施行前に更新受講が必要になるため、証明書の日付確認をおすすめします。

契約・書類面で変える必要があるもの

定款への監理支援事業の明記

定款(又は寄附行為)の事業内容等に、育成就労制度に係る監理支援事業を行う団体であることを明記する必要があります。定款変更には法人内部の手続や所管庁への手続が必要な場合があり、時間のかかる項目です。

送出機関との取次契約の締結し直し

現在の契約が技能実習の送出しに係るものである場合、その契約だけでは育成就労制度の取次契約として扱われず、原則として育成就労用の取次契約を新たに締結する必要があります。契約書には、本人等の財産管理や違約金契約をしないことの確認(育成就労法施行規則第67条第5号)の記載が求められ、日本語版と現地語(又は英語)版の両方の提出が必要です。相手国側とのやり取りを要するため、早めの着手が望ましい項目です。

監理支援費表・業務運営規程の整備

監理支援費表を含む業務運営規程を整備し、許可後は管理支援費の金額をホームページ上で公開する必要があります。

受入れ実務で変わるもの(在籍中の技能実習生への対応)

経過措置の全体像

出入国在留管理庁公表の「育成就労制度の概要」(令和7年12月改訂)によれば、次のいずれかに該当する場合、施行日後も技能実習を行うことが可能で、要件を満たせば次の段階の技能実習までは引き続き行うことができます。

  • ① 施行日前に入国し、施行日(令和9年4月1日)時点で現に技能実習を行っている場合
  • ② 施行日前に技能実習計画の認定申請をしている場合(施行日から3か月以内に開始する計画に限る。施行日以後に入国できる場合がある)

留意点として、次の内容が明記されています。

  • 施行日時点で技能実習中の1号技能実習生は、施行後も2号技能実習への移行が可能
  • 技能実習3号への移行は、施行日時点で2号技能実習を1年以上行っている者に限られる
  • この経過措置による在留には技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労へ移行することはできない
  • 施行日前に技能実習を終えて出国している場合、技能実習生として再入国はできない(期間・職種によっては育成就労外国人として入国できる場合がある)

育成就労側の新ルールへの備え

新規の受入れは育成就労計画の認定制(外国人ごとに3年間の計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける)に移行します。また、一定要件下での本人意向の転籍が認められるため、転籍時の連絡調整など監理支援機関としての新しい役割への備えも必要です。

準備の優先順位(行政書士の視点)

公表情報を踏まえると、時間のかかる項目から着手するのが合理的です。あくまで一般的な整理ですが、①定款変更・送出機関との契約締結し直し・外部監査人の選定(外部との調整が必要で長期化しやすい)、②監理支援責任者の講習・常勤役職員体制の確認(社内で完結するが計画性が必要)、③申請書類の作成・事業所関係資料の準備(要件が固まってから着手可能)、という順序が考えられます。施行日から事業を行う場合の申請期限は令和8年9月30日です。

まとめ

既存の監理団体にとって、育成就労制度への移行は「許可の取り直し」であり、外部監査人・定款・送出機関契約・人員体制など、変えるべき点は多岐にわたります。一方、在籍中の技能実習生には経過措置があり、次の段階までの移行が認められる場合があります。経過措置の適用は個々の実習生の状況により異なるため、詳細は出入国在留管理庁・外国人技能実習機構の公表資料をご確認の上、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。