出入国在留管理庁が公表する「育成就労制度Q&A」には、80問にわたり制度の実務的な論点が整理されています。読み込むと、受入企業(育成就労実施者)と監理支援機関の支援体制整備には相応の準備が必要なことが分かります。本記事では、Q&Aと運用要領を照らし合わせ、実務上負担が大きくなりやすいポイントを解説します。
入管庁「育成就労制度Q&A」とは
出入国在留管理庁のサイトでは、育成就労制度に関するQ&Aが公表されています。制度目的から技能実習制度との関係、監理支援機関、受入れ機関、転籍、日本語能力、二国間取決めまで12カテゴリ・約80問で構成されており、制度の細部を確認する際の有力な公式情報源です。
受入れを検討する企業がまず読みたいのは「受入れ機関」「日本語能力」「転籍」のカテゴリです。以下、支援体制の観点から特に負担が大きくなりやすい4点を取り上げます。
大変ポイント1:日本語教育の体制
育成就労制度では、日本語教育が制度の柱の一つに位置づけられています。Q&Aによれば、次のような枠組みです。
- 育成就労外国人は、就労開始前に日本語教育参照枠A1相当以上の試験に合格しているか、合格していない場合は、入国後講習等において認定日本語教育機関等によるA1相当以上の講習を受講する必要がある
- 入国後講習では、認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することとされている
- 育成就労期間中は、認定日本語教育機関の「就労」課程のA2相当の講習を100時間以上受講する機会を提供する必要がある
- 基本的に、3年間を通じてA2相当の日本語能力を修得し、試験に合格することが求められ、開始から1年以内にA1相当の日本語能力に係る試験を受けることが求められる
技能実習制度と比べ、時間数・水準が明確に定められた日本語教育の実施・機会提供が求められるため、認定日本語教育機関との連携やカリキュラムの確保が実務上の大きな準備事項になります。
また、監理型育成就労では、入国後講習を実施する施設の確保は原則として監理支援機関の役割とされています(単独型や外国の取引先から受け入れる監理型では育成就労実施者)。
大変ポイント2:生活支援・相談対応の体制
運用要領のポイントによれば、育成就労実施者には次のような措置が求められます。
- 健康状況を把握するための措置:労働安全衛生法に定める雇入れ時・定期の健康診断の適切な実施、健康状況の定期的な聞き取り等
- その他の生活状況を把握するための措置:緊急連絡網の整備、定期的な面談での日常生活・トラブルの確認等
「雇って終わり」ではなく、生活面まで含めた継続的な把握・対応の体制が制度上求められている点が、日本人従業員の雇用管理との大きな違いです。困難時の相談対応も含め、誰が・どの頻度で・どの言語で対応するかをあらかじめ決めておく必要があります。
大変ポイント3:転籍への対応体制
育成就労制度では、やむを得ない事情がある場合の転籍に加え、一定の要件(同一機関での就労が1〜2年を超えること、技能・日本語試験への合格、転籍先の適正性等)を満たす場合の本人意向による転籍が認められます。
運用要領のポイントによれば、育成就労外国人が転籍を希望する場合、育成就労実施者・監理支援機関等に申出がなされ、監理支援機関等は本人が円滑に育成就労を継続できるよう必要な連絡調整等を行う必要があるとされています。転籍は受入れ側にとって人材流出の局面ですが、制度上は妨げるのではなく調整に協力する立場に置かれる点で、意識の切り替えが必要な部分です。
大変ポイント4:試験を受験させる義務
育成就労実施者には、3年間の育成就労の終了までに、分野別運用方針に定める技能試験と日本語試験のいずれも受験させる義務があります。さらに、目標達成に向けた中間的評価として、開始から1年以内に一定水準の試験を受験させる義務もあります。
受験手配・学習時間の確保・不合格時のフォローまで含めると、3年間を通じた学習支援のスケジュール管理が必要であり、これも技能実習制度からの実務的な変化といえます。
受入企業と監理支援機関の役割分担の整理
ここまでの内容を整理すると、おおむね次のような分担になります(監理型育成就労の場合)。
- 育成就労実施者(受入企業):健康・生活状況の把握措置、日本語学習機会の提供、試験受験させる義務、日々の労務管理
- 監理支援機関:実施者への監査・指導、入国後講習の施設確保、外国人からの相談対応・保護、転籍時の連絡調整
ただし、具体的な分担は受入れ形態や委託内容により異なります。契約段階で「どちらが何を担うか」を明確にしておくことが、施行後のトラブル防止につながります。
まとめ
育成就労制度の支援体制は、日本語教育(A1講習100時間以上・A2講習の機会提供)、生活支援、転籍対応、試験受験管理と、技能実習制度よりも体系的な整備が求められる内容になっています。入管庁のQ&Aは実務の疑問に答える形で整理されており、準備段階での一読をおすすめします。なお、本記事は現時点の公表情報に基づくものであり、今後の告示等で詳細が示される部分もあります。個別のケースについては専門家にご相談ください。
