2027年4月に始まる育成就労制度は、すべての産業分野で受入れができるわけではありません。対象となる分野・受入れ見込数・転籍制限期間などは「分野別運用方針」で個別に定められています。出入国在留管理庁・厚生労働省の公式資料に基づき、制度の全体像を整理します。
1. 分野別運用方針とは何か
育成就労制度・特定技能制度は、共通の「基本方針」に加えて、分野ごとに「分野別運用方針」が定められる二段構えの制度設計になっています。基本方針の概要によれば、分野別運用方針では、人手不足の状況を踏まえて受入れ対象分野を定めるとともに、原則として5年ごとの受入れ見込数を示し、この見込数を外国人受入れの上限数として運用することとされています。
受入れ対象となる分野は、生産性向上や国内人材確保の取組を行った上でなお人材確保が困難であり、分野の存続・発展のために外国人の受入れが必要なものに限られます。分野別運用方針の策定に当たっては、学識経験者や労使団体等から構成される有識者会議で意見が聴取されています。
2. 対象となる分野の全体像:17分野
出入国在留管理庁・厚生労働省が公表した資料によれば、育成就労産業分野は次の17分野です(所管省庁別)。
- 厚生労働省:介護、ビルクリーニング、リネンサプライ
- 経済産業省:工業製品製造業(機械金属加工・電気電子機器組立て・縫製など17業務区分)
- 国土交通省:建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、物流倉庫
- 農林水産省:農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業
- 環境省:資源循環(廃棄物処分業(中間処理))
3. 特定技能制度との対象分野の違い
特定産業分野(特定技能制度の受入れ分野)は全部で19分野ありますが、育成就労産業分野はそのうち17分野にとどまります。自動車運送業分野と航空分野の2分野は、特定技能制度のみの対象であり、育成就労の対象外です。国内での育成になじまない分野は育成就労の対象から外れるという整理によるものです。
4. 分野別運用方針で定められる主な内容
受入れ見込数
出入国在留管理庁・厚生労働省の資料によれば、令和11年3月末までの受入れ見込数は、特定技能1号80万5,700人、育成就労42万6,200人、合計123万1,900人とされています(育成就労は令和9年4月の制度開始からの受入れ)。技能実習制度には受入れ見込数という発想自体がありませんでしたが、育成就労制度では新たに上限として設定されている点が制度上の大きな違いです。
分野別の内訳では、工業製品製造業(育成就労119,700人)、建設(同123,500人)、飲食料品製造業(同61,400人)などが比較的大きな見込数となっています。
技能・日本語能力水準の枠組み
分野別運用方針では、育成就労の各段階で求められる技能水準・日本語能力水準の一般的な枠組みが示されています。
| 段階 | 技能水準 | 日本語能力水準 |
|---|---|---|
| 就労開始時 | - | A1相当以上(又は相当講習の受講) |
| 1年経過時 | 育成就労評価試験(初級) | A1相当以上 |
| 本人意向による転籍時 | 育成就労評価試験(初級) | A2.1相当以上 |
| 育成就労終了時・特定技能1号 | 育成就労評価試験(専門級)/特定技能1号評価試験 | A2.2相当以上 |
| 特定技能2号 | 特定技能2号評価試験 | B1相当以上 |
なお、自動車運送業分野では、特定技能1号のバス・タクシー運転者に求められる日本語能力水準は原則B1とされていますが、日本語サポーターの同乗などの条件を満たす場合はA2.2まで引き下げられます。分野によっては、この一般的な水準より高い水準を求める場合もあるとされています。
転籍制限期間
本人意向による転籍の制限期間は、1年とすることを目指しつつも、当分の間、分野ごとの業務内容等を踏まえて1年から2年の範囲内で設定することとされています。公表資料によれば、介護・建設・造船舶用工業・自動車整備・漁業・工業製品製造業・鉄道・資源循環の8分野は転籍制限期間が2年、それ以外の分野(ビルクリーニング・宿泊・農業・外食業・林業・木材産業・リネンサプライ・物流倉庫)は1年とされています。
上乗せ基準
制度の適正性を確保するため、省令による全分野共通の基準に加え、分野特有の事情に鑑みて、告示により当該分野独自の基準(上乗せ基準)が定められる場合があります。例えば、事業者の範囲の限定(許認可等)、受入事業実施法人(建設分野のJAC等)への加入、受入れ機関の受入人数上限、監理支援機関等の範囲の限定などが分野ごとに設けられています。
5. 新たに追加された分野・業務区分
令和8年1月23日に閣議決定された分野別運用方針では、次の見直しが行われました。
- 新たに追加された分野:リネンサプライ、物流倉庫、資源循環(廃棄物処分業(中間処理))
- 既存分野に新たな業務区分が追加された分野:工業製品製造業、航空(空港グランドハンドリング)、鉄道(駅・車両清掃)、飲食料品製造業(水産加工業)
これにより、育成就労産業分野は17分野・業務区分数は分野横断で相当数に及ぶ体制となりました。
6. 受入企業が今から確認しておきたいこと
分野別運用方針は分野ごとに転籍制限期間・上乗せ基準・技能水準の詳細が異なるため、自社が属する分野の分野別運用方針を個別に確認することが不可欠です。また、受入れ見込数は上限として運用されるため、分野の人手不足の状況によっては見直しが行われる可能性がある点にも留意が必要です。
まとめ
育成就労制度の対象は、特定産業分野19分野のうち自動車運送業・航空を除く17分野です。分野別運用方針では、分野ごとに受入れ見込数・技能日本語水準・転籍制限期間(1〜2年)・上乗せ基準が定められており、令和8年1月23日の閣議決定でリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が新たに追加されました。制度の詳細は分野ごとに異なるため、自社の分野の分野別運用方針を個別に確認する必要があります。
