「外国人採用に本気で取り組もうと調べ始めたら、かえって『うちでは無理なのでは』と感じてしまった」——そうした相談は珍しくありません。実は、採用意欲の高い企業ほど壁に突き当たりやすいのには、制度上の構造的な理由があります。本記事では、その3つの構造と突破口を整理します。
結論:意欲の問題ではなく「構造」の問題
先に結論を述べると、外国人採用がうまく進まないのは、多くの場合、企業の努力不足ではありません。
①業務と在留資格のミスマッチ
②時間のギャップ
③企業側の要件
という3つの構造が重なって、「採用したい気持ちが強い企業ほど、先に進めない」ように見える状況が生まれています。順に見ていきます。
構造1:採用したい業務と在留資格が噛み合わない
外国人採用を検討する企業の多くは、人手不足が深刻な現場業務の担い手を探しています。ところが、企業雇用の代表的な在留資格である「技術・人文知識・国際業務」(技人国)は、学術上の素養を背景とする専門的・技術的業務のための資格であり、現場業務を主として担うことは予定されていません。
現場業務には特定技能(19の特定産業分野)や育成就労(令和9年4月施行)というルートが用意されていますが、対象分野・業務区分が限定されているため、自社の業務が対象に含まれない場合もあります。「採用したい業務」が深刻な人手不足であるほど、対応する在留資格の選択肢が狭い——これが1つ目の構造です。
構造2:「すぐ来てほしい」と審査・準備期間のギャップ
人手不足の企業ほど「今すぐ働いてほしい」という切実な事情を抱えています。しかし、外国人雇用では多くの場合、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請など、出入国在留管理庁の審査を経る必要があります。審査に要する期間は申請の種類や個別事情により異なりますが、即日で完了するものではありません。
さらに特定技能であれば、支援計画の作成や登録支援機関への委託検討、試験合格者の確保など、申請前の準備にも時間がかかります。「急いでいるのに準備が追いつかない」——そして急ぐあまり準備不足のまま申請すると、かえって審査が長引いたり不許可になったりするリスクが生じます。これが2つ目の構造です。
構造3:企業側の要件・体制の壁
見落とされがちですが、審査では企業側の状態も見られます。特定技能を例にとると、特定技能基準省令により次のような基準への適合が求められます。
- 報酬額が日本人が従事する場合と同等以上であること
- 労働・社会保険・租税関係法令の遵守
- 労働関係法令違反による罰金刑等の欠格事由に該当しないこと
- 1号特定技能外国人への支援体制(自社支援または登録支援機関への委託)
人手不足で現場に余裕がない企業ほど、こうした体制整備や書類準備の負担が重く感じられます。「人が足りないから採用したいのに、採用のための体制づくりに人手が要る」——これが3つ目の構造であり、「採用したい企業ほど採用できない」と言われる大きな理由です。
突破口:業務の切り分けと制度選定から始める
構造の問題は、順序を変えることで乗り越えられます。おすすめの検討順序は次のとおりです。
- 業務の切り分け:担ってほしい業務を「専門業務」「現場業務」「その組み合わせ」に整理する
- 制度選定:それぞれの業務に対応する在留資格(技人国・特定技能・育成就労等)を確認する
- 要件の確認と準備:本人側要件(学歴・試験合格等)と企業側要件(報酬・体制等)を先に整えてから候補者を探す
- 時間の見積もり:審査・準備期間を織り込んだ採用計画を立てる
前回の記事でも触れたとおり、「雇えない」のではなく「準備すれば雇える」が実態です。準備の順序を整えることが、結果として最短ルートになります。
まとめ
「外国人採用したい企業ほど採用できない」ように見えるのは、業務と在留資格のミスマッチ・審査や準備の時間・企業側要件という3つの構造によるものであり、企業の意欲や努力の問題ではありません。構造を理解し、業務の切り分けと制度選定から順に準備を進めることで、道筋は見えてきます。自社のケースでどの制度が使えるかは個別性が大きいため、公式情報の確認と専門家への相談をおすすめします。
