同じ業種・同じ規模でも、外国人採用が定着まで進む会社と、申請段階や入社後につまずく会社があります。その違いは運や人柄ではなく、多くの場合「制度への向き合い方」にあります。本記事では、在留資格制度の要件から逆算して、うまくいく会社に共通する習慣と、つまずきやすいパターンを整理します。
はじめに:個社の優劣ではなく「向き合い方」の違い
最初にお断りしておくと、本記事は特定の企業の優劣を論じるものではありません。在留資格制度には、申請前・申請時・入社後のそれぞれに公式に定められた要件や手続きがあります。それらにどの段階から向き合うかの違いが、結果の違いとして表れやすい——という整理です。以下、制度の要件から逆算して見ていきます。
うまくいく会社に共通する3つの習慣
1. 採用前に「業務と在留資格の整合」を確認している
外国人が日本で従事できる業務は在留資格ごとに決まっています。うまくいく会社は、候補者を探す前に「担ってほしい業務はどの在留資格に対応するか」を確認し、その資格の要件(学歴・試験合格等)を満たす人を探します。順序が逆になると、内定を出したのに在留資格が取得できないという事態が起こり得ます。
2. 雇用条件を「書類で説明できる」状態にしている
就労系の在留資格では、報酬が日本人が従事する場合と同等額以上であることが求められます(技人国は上陸基準省令、特定技能は特定技能基準省令)。うまくいく会社は、賃金規程や同種業務の日本人従業員との比較など、同等性を書類で説明できる状態を採用前に整えています。感覚的に「十分払っているつもり」でも、書類で示せなければ審査では伝わりません。
3. 入社後の手続きまで見越している
採用はゴールではなく、入社後にも手続きが続きます。例えば、技人国等の在留資格を持つ中長期在留者は、勤務先の変更等があった場合、14日以内に出入国在留管理庁への届出(所属機関等に関する届出)が必要です。
また、在留期間の更新時には、それまでの在留状況——納税義務の履行、届出義務の履行、労働関係法規への適合などが考慮されます(在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン)。
うまくいく会社は、こうした「入社後の積み重ねが次の更新の材料になる」ことを理解して、日常の労務管理と届出をきちんと回しています。
つまずきやすい3つのパターン
1. 「人が先、制度が後」
「良い人がいたから採用を決めた。ビザは後から何とかなるだろう」——このパターンが最も多いつまずき方です。在留資格の要件は採用の熱意では変わらないため、業務と資格が合っていなければ申請は通りません。
2. 転職者の受入れで「前の会社で働けていたから大丈夫」と考える
すでに技人国等で働いている方を中途採用する場合でも、新しい勤務先での業務内容がその在留資格に該当するかは別問題です。
前職では該当していた業務が、転職後の業務では該当しない場合もあります。この確認の手段として、転職後に就労資格証明書の交付申請(入管法第19条の2)を行い、新しい勤務先での活動が在留資格に該当するかをあらかじめ確認しておく方法があります(申請は任意です)。確認しないまま更新期限を迎えると、更新申請の場面で初めて問題が表面化することになります。
3. 日常の届出・労務管理の漏れが更新時に表面化する
前述のとおり、更新許可の判断では納税・届出義務の履行や労働関係法規への適合が考慮されます。
日常の小さな漏れ——届出忘れ、社会保険の手続き遅れ、雇用条件の説明と実態のズレなど——は、その時点では問題にならなくても、更新申請の場面でまとめて表面化することがあります。
自社チェックの4項目
これから外国人採用に取り組む場合も、すでに雇用している場合も、次の4点の確認をおすすめします。
- 業務内容:従事させている(させたい)業務は、本人の在留資格に対応しているか
- 雇用条件:日本人と同等以上の報酬であることを書類で説明できるか
- 法令遵守:労働・社会保険・租税関係の手続きに漏れがないか
- 入社後の体制:届出(14日以内)や更新期限を管理する仕組みがあるか
まとめ
外国人採用がうまくいく会社と失敗する会社の違いは、「採用前に制度と向き合うか、問題が起きてから向き合うか」に集約されます。業務と在留資格の整合確認・雇用条件の書類化・入社後の届出と労務管理という3つの習慣は、いずれも特別なノウハウではなく、制度が公式に求めていることの裏返しです。自社の状況に不安がある場合は、公式情報の確認と専門家への相談をおすすめします。
