「外国人を採用したいが、現場の仕事はさせられないと言われた」「逆に、うちは事務職なのに採用できないと言われた」——外国人雇用の相談では、こうした戸惑いの声をよく耳にします。その背景にあるのは、「在留資格ごとに従事できる業務が決まっている」という日本の制度の仕組みです。本記事ではこの仕組みを整理します。
「単純労働しかさせられない」ではなく「資格ごとに業務が決まっている」
まず言葉の整理からです。「単純労働」という言い方が独り歩きしがちですが、これは在留資格制度上の用語ではありません。制度の実際の仕組みは、外国人が日本で行える活動(業務)は、持っている在留資格によって決まるというものです。
つまり「外国人だから現場作業をさせられない」のではなく、「その方の在留資格が現場作業を予定していない」ということです。逆に、現場業務に対応する在留資格を持つ方であれば、現場業務に従事できます。業務に上下があるという話ではなく、資格と業務の対応関係の問題です。
在留資格の基本の仕組み
在留資格は「活動」に対して与えられる
日本の在留資格は、出入国管理及び難民認定法(入管法)の別表に定められており、多くは「日本で行う活動」に対応して与えられます。どのような在留資格があるかは、出入国在留管理庁の「在留資格一覧表」で公表されています。
3つの大区分
働くという観点では、在留資格はおおむね次の3つに分けられます。
- 就労に制限のない在留資格:永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者(いわゆる身分系)。業務内容の制限なく雇用できます
- 定められた範囲で就労できる在留資格:技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能、介護など。資格ごとに従事できる業務が決まっています
- 原則として就労が認められない在留資格:留学・家族滞在など。ただし資格外活動許可を受ければ、原則週28時間以内などの制限の下でアルバイトが可能です(出入国在留管理庁「資格外活動許可について」参照)
冒頭の「させられない」問題は、主に2つ目の区分で起こります。
なぜ「技人国」では現場作業ができないのか
企業に雇用される外国人の代表的な在留資格が「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国)です。これは入管法上、自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事する活動に与えられる在留資格です。
大学や専門学校で学んだ知識を活かすエンジニア、通訳・翻訳、海外営業、設計などが典型で、専門的・技術的分野の資格と位置づけられています。このため、学術上の知識を必要としない業務に主として従事することは、この資格では予定されていません。
なお、出入国在留管理庁は「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」というガイドライン(令和8年4月1日一部改正)を公表しており、別紙として実務研修の取扱いや事例集等が示されています。
「技人国=現場に一切出られない」という単純な話ではなく、キャリア形成上の位置づけによって判断される部分があるため、詳細はガイドラインと個別事案の確認が必要です。
では現場業務を担ってもらう方法はないのか
あります。現場業務に対応する在留資格が整備されています。
特定技能
人手不足分野での受入れを目的とした在留資格で、分野省令に定める19の特定産業分野(介護、建設、農業、外食業、宿泊など)で、分野別運用方針に定める業務区分の業務に従事できます。技能試験・日本語試験の合格(または技能実習2号の良好な修了)が要件です。
育成就労(令和9年4月1日施行)
技能実習制度に代わる新しい制度で、育成就労産業分野において3年間で特定技能1号水準の人材を育成することを目的としています。施行後は、未経験から育成しながら現場業務を担ってもらうルートの中心になることが想定されています。
身分系の在留資格・資格外活動
永住者や日本人の配偶者等など就労制限のない在留資格の方は、業務内容を問わず雇用できます。また、留学生のアルバイトは資格外活動許可の範囲内(原則週28時間以内)で可能です。ただし、在留カードの確認を怠って就労できない方を働かせると、不法就労助長罪に問われるおそれがあります。同罪については、育成就労制度を創設した改正法で罰則の引上げも定められており、企業側の確認責任はますます重くなっています。
「採用したい業務」から逆算するのが正解
外国人雇用を検討する際は、「外国人を採用できるか」ではなく、次の順序で考えると整理できます。
- 担ってほしい業務内容を具体的にする(専門業務か、現場業務か、その組み合わせか)
- その業務に対応する在留資格を確認する(技人国か、特定技能か、育成就労か等)
- その在留資格の要件を満たす候補者を探す(学歴・試験合格・実務経験等)
この順序を踏まずに「良い人がいたから」と採用を先に決めてしまうと、在留資格が取得できず採用が白紙になる、あるいは資格外の業務をさせてしまうリスクが生じます。
まとめ
「単純労働しかさせられない」という表現の実態は、「在留資格ごとに従事できる業務が決まっている」という制度の仕組みです。技人国は専門的・技術的業務のための資格であり、現場業務には特定技能や育成就労という別のルートが用意されています。自社の業務がどの在留資格に対応するかの判断には個別性があるため、公式情報の確認と、必要に応じた専門家への相談をおすすめします。
