はじめに
外国人を雇用する事業者の方から、在留資格申請に関して
「審査基準は公開されているのか」
「どこまで満たせば必ず許可されるのか」
といったご質問を受けることがあります。
在留資格の許可・不許可は、法律・政令・告示などの法令体系に基づき判断されますが、一般的な許認可制度とは異なる特徴もあります。
本記事では、事業者の方にも理解しやすいよう、在留資格申請に関係する「審査基準」「処分基準」という考え方を、法体系から整理します。
Ⅰ 在留資格申請の基本的な法体系
1.出入国管理及び難民認定法の位置づけ
在留資格制度の根拠となる法律は、出入国管理及び難民認定法です。
外国人に対する在留資格の付与や変更、更新は、同法に基づく行政庁の許可として行われます。
重要な点として、在留資格の許可・不許可は、
- 権利が当然に認められるものではなく
- 行政庁が個別に判断する「許可処分」
に該当します。
このため、「条件を満たせば必ず許可される」と断定できる制度ではありません。
2.政令・省令・告示の役割
在留資格制度は、法律だけで完結しているわけではありません。
主に以下のような階層構造で定められています。
- 法律:出入国管理及び難民認定法
- 政令:出入国管理及び難民認定法施行令
- 省令:出入国管理及び難民認定法施行規則
- 告示:在留資格ごとの上陸許可基準等を定める告示
たとえば、技術・人文知識・国際業務などの在留資格では、告示により学歴や実務経験などの基準が定められています。
Ⅱ 「審査基準」とは何か
1.行政手続法における審査基準
一般的な行政手続において、「審査基準」という言葉は、行政手続法に基づいて用いられます。
行政手続法では、申請に対する処分について、
- 審査基準を定める努力義務
- 定めた場合には原則として公表すること
が規定されています。
2.在留資格申請における審査基準の扱い
一方で、在留資格申請については、行政手続法上の「審査基準」として体系的に公表された一覧表のようなものは確認できません。
実務上「審査基準」と呼ばれることが多いものは、以下のような内容です。
- 法律・政令・省令に定められた要件
- 告示で明示された基準
- 出入国在留管理庁が公表している申請案内・ガイドライン
これらは重要な判断材料ではありますが、これらを満たせば必ず許可されると公式に示されているわけではありません。
Ⅲ 「処分基準」とは何か
1.行政手続法における処分基準
「処分基準」は、行政手続法において、不利益処分を行う際の基準として規定されています。
不利益処分とは、営業停止や許可取消など、既に与えられた権利を制限する処分を指します。
2.在留資格申請と処分基準の関係
在留資格申請の不許可が、行政手続法上の「不利益処分」に該当するかについては、制度上整理が必要です。
在留資格申請は、
- 新たな在留資格の付与
- 在留資格の変更・更新
といった「申請に対する許可」であり、既存の権利を取り消す処分とは性質が異なります。
そのため、在留資格申請について、行政手続法上の処分基準が明確に公表されているとは確認できません。
Ⅳ 審査基準・処分基準と裁量の関係
1.在留資格許可における裁量行政
在留資格の許可は、法令上「許可」と規定されており、一定の裁量が認められる行政行為とされています。
これは、
- 外国人の活動内容
- 受入れ機関(事業者)の状況
- 継続性・安定性
などを、個別に総合判断する必要があるためです。
2.基準がある場合・ない場合の違い
告示等で明文化された要件がある場合でも、
- 形式的に要件を満たしているか
- 実態として活動が行われるか
といった点は、個別に確認されます。
そのため、事業者にとって重要なのは、
「基準を満たしているか」だけでなく、
「事業内容・雇用内容を客観的に説明できるか」
という点になります。
Ⅴ 実務上の注意点(事業者向け)
事業者の立場から特に注意すべき点は、次のとおりです。
- 「審査基準を満たしている=必ず許可される」とは限らない
- 公表されている資料は、最低限の判断材料である
- 事業実態・雇用の必要性・継続性が重視される
- 個別事情により判断が異なる可能性がある
申請書類では、法令上の要件を踏まえつつ、実態が伝わる説明が重要になります。
まとめ
在留資格申請における審査は、
- 出入国管理及び難民認定法を中心とする法令
- 告示や公式ガイドライン
に基づいて行われます。
一方で、一般的な許認可制度のように、明確に一覧化された審査基準・処分基準が公表されているわけではない点には注意が必要です。
事業者としては、制度の枠組みを正しく理解したうえで、
個別事案ごとに慎重な確認と準備を行うことが重要といえます。
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