1.前提整理:通訳は「義務」ではないが、理解確保は必要
現行の法令・指針において、
「必ず通訳を配置しなければならない」という明文規定は確認できません。
一方で、厚生労働省の指針では、外国人労働者が労働条件やルールを理解できるよう配慮することが求められています。
したがって事業者としては、通訳を雇うかどうかではなくどのように理解を確保するかが重要になります。
2.通訳不要で理解を助けるツール・方法【実例】
以下は、通訳を常設しなくても実務上活用されている方法であり、
公式指針の趣旨(「理解できる形で説明する」)に沿ったものです。
① 労働条件通知書・雇用契約書の多言語併記
最も基本かつ重要な対応です。
実務例
- 日本語+母国語(英語・ベトナム語・中国語など)を併記
- 完全翻訳でなく、以下の重要事項を重点的に翻訳
- 賃金
- 労働時間
- 休日
- 業務内容
- 契約期間
注意点
「日本語原文が正式である」旨を明記する運用が一般的ですが、その法的有効性の評価は個別事情によります。
② 「やさしい日本語」を用いた説明資料
やさしい日本語とは
- 短文
- 難しい漢語・専門用語を避ける
- 一文一義
を意識した日本語表現です。
実務例
- 就業ルールを
✕「就業規則に基づき懲戒処分を行う場合があります」
〇「ルールを守らないと、仕事を続けられないことがあります」 - 口頭説明+書面配布の併用
※「やさしい日本語」の使用自体を義務づける規定は確認できませんが、理解促進の手段として有効とされています。
③ 図解・イラスト・写真を使った説明
特に有効な場面
- 作業手順の説明
- 安全衛生教育
- 服装・持ち物のルール
実務例
- 作業工程を写真付きマニュアルで説明
- NG行為/OK行為をイラストで表示
- 掲示物を文字中心ではなく視覚中心にする
※安全配慮義務との関係でも、視覚的説明は重要とされています。
④ 翻訳アプリ・機械翻訳の補助的利用
実務例
- 雇用条件説明時に翻訳アプリを併用
- 重要事項は画面を見せながら確認
- その場で簡単な質問・回答に使用
注意点
- 誤訳のリスクがあるため、
重要事項は書面で再確認することが望ましいとされています。
⑤ 理解確認を「記録に残す」
実務例
- 「説明を受け、理解しました」というチェック欄
- 重要事項ごとに✔を入れてもらう形式
- 日付・署名を記載
ポイント
- 「理解したかどうか」を事後的に確認できる形を残すことは、
トラブル防止の観点から有効です。 - ただし、署名があれば必ず有効というわけではなく、
実質的な説明内容が重要である点は留意が必要です。
3.「通訳がいない」ことで注意すべき実務リスク
- 労働条件の誤解による紛争
- 業務指示が伝わらないことによる事故
- 在留資格に合わない業務をさせてしまうリスク
これらは、言語の問題そのものよりも「説明体制の不備」が原因となるケースが多いとされています。
まとめ
通訳を配置する法的義務は、現時点の公式情報では確認できません。
しかし、事業者には「外国人労働者が理解できる形で説明する努力」が求められます。
通訳が置けない場合でも、多言語書面、やさしい日本語、図解資料、翻訳ツール
といった方法を組み合わせることで対応は可能です。
重要なのは、通訳の有無ではなく、理解を確保する姿勢と体制です。
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